Ducati 899 Panigaleいじり

Ducati 899 Panigale いろんな意味でいじりとバイク全般

フロントブレーキキャリパ メンテナンス - ブレンボ Brembo -

※この記事ではブレーキという重要部品のメンテナンスを解説しています。
 基本的な整備経験の無い場合は安易に真似をしないようにしてください。

 

自分でフロントブレーキキャリパの清掃と揉みだしメンテナンスをやってみました。

清掃は分かるでしょうが、「揉み出し」とは?

ブレーキキャリパには油圧で押し出されたり引っ込んだりして、ブレーキパッドをブレーキローター(ディスク)へ押し付ける力を加減する役目をする「ピストン」というパーツがあります。ブレーキダストなどの汚れがキャリパ内に堆積してくるとそのピストンの動きが悪くなり、気がつかないうちにブレーキィーリングが悪くなったりします。 その汚れを清掃し、ピストンを動きをスムーズな状態に戻してやるのが「ピストンの揉み出し」と呼ばれるメンテナンスです。

ニッシンのキャリパーは以前のCBRで何度もやっていたのですが、今回のはあの「ブレンボ」のキャリパーです。ブレンボだよ?出来るのかな・・と思いましたが、同じ油圧ブレーキシステムですし、そんな大きく変わらないだろうと思いトライしました。

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まずは清掃です、普通にバラしてますが、タイヤ交換などをしているのでキャリパ周りのバラしはOKです。注意する点は、ピストンピンはブレーキキャリパのマウントボルトを外す前に緩めておく(完全には外さない)ことです。マウントボルトを外してからピンを緩めようとすると「あれ、うまく力がかけられないから外せない・・」と、またマウントボルトを取り付けてやらないとならないからです、。キャリパを外したのに、またキャリパをフォークに取り付けなおしてパッドピンを外す・・CBR時代に何度もやらかしました。これ忘れないようにしましょう。

 

あと、キャリパを取り外す際は、キャリパをできるだけフォーク側に持っていってからゆっくりズラしてブレーキローターから外すようにしましょう。ブレーキディスクが大型化してキャリパ自体も大きくなっている昨今、ホイールとキャリパのクリアランス(隙間)がかなり少ないため、取り外しの際にキャリパがホイールに当たって傷がついてしまいやすいからです。コツンと当たっただけでけっこうすぐに傷がついたりするので要注意です。隙間の大きくなる上側(フォーク側)に持っていってから外すとそのリスクも少ないというわけです。

 

ちなみにブレンボのピンはトルクスです。 あっ・・このサイズのトルクスあったかな?と思ったのですが、幸い買っておいたトルクスレンチでありました。次はトルクスのソケットを用意しておくことにして今回はこれで行きました。

パッドピンは以外と軽く締められていて、しかもブレンボは一本です。あともう一点の中としては、パッドピンに割りピンのようなもので抜け防止しているパーツがあります。これをパッドピンを緩める前に抜いて外しておくことです。このパーツは初めて見たので「なんだこれ?」と思いましたが。

 

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食器用中性洗剤を溶かしたぬるま湯と歯ブラシでキャリパとパーツ類をゴシゴシと洗っていきます。パッドスプリングをすぐに綺麗な金色になりました。気持ちがいいですね。個人的には、パッドスプリングが綺麗な金色だと一気にキャリパ回りのキラキラ度が上がると感じますね。キャリパを見ると一番に目立つパーツですからね、そういう意味でも大事なパーツだと思います(笑)

パッドピンは本当は新品に変えたいところですが、新ブレーキパッドにする次回に回すこととしておき清掃とシリコンコーティングするに留めておきます。

キャリパーマウントボルトも本当は変えたい・・。

 

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ブレーキパッドも清掃します。ただ、ローターと当たるパッド面はあまりゴシゴシしないほうが良いと思います。また、ブレンボのパッドはバラすと元の取り付け向きが分からなくなるので、分からなくなる前にパッドの裏へ「RR(右キャリパの右バッドの意)」「LL(左キャリパの左バッドの意)」とか油性マジックで書いておくようにしましょう。

 

キャリパ自体の清掃です。

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私の場合ですが、このように軍手などした指を間に入れた状態でブレーキレパーをポンピングし、ピストンを押し出します。最初は指が軽く挟まれる程度に出して清掃し、徐々に「これ以上挟まれたら指が抜けなくなるカモ!」くらいにピストンを押し出して清掃していきます。挟まれた指が本当に抜けなくならないように注意してください(笑)

慣れない内はゆっくりやりましょう。

 

-余談-

必ずしもオススメ出来るわけではないですが、指を挟んでピストンの押し出しを実感すると、油圧がどのように働いてブレーキパッドをブレーキディスクローターに押し付けているのか構造を実感しやすくなります。すると、実際のブレーキング時にこの感触を思い出すことで、今バッドがどれくらいの力でブレーキディスクローターに押し付けられているのかイメージしやすくなり、それはつまりブレーキング操作の向上に繋がります。ぜひ、ピストンに指を挟んでブレーキレバーを操作して実感してみてください(指が抜けなくならない程度で)。

 

清掃は歯ブラシでピストンの全周と周囲のキャリパボディを歯を磨くのと同じように洗っていきます。パッドのダストが落ちてどんどん綺麗になっていきます。

ピストン周囲を洗ったら、ピストンをキャリパの中に押し込み、またピストンを押し出して洗ってまた押し戻す・・こうやってピストンを清掃して動きをスムーズにしていく行為が「ピストンの揉み出しメンテナンス」と呼ばれるものです。

ピストンを押し戻す際も、一つのピストンだけを急激に押し戻すのも危険です。他のピストンに急激に油圧が回り、他のピストンが抜けてしまう可能性があるからです。あくまで「4つのピストンを出来るだけ均等に」押し戻すようにしましょう。

やっているうちに動きやすいピストン、動かないピストンがあるというのに気がつくと思います。完全に4つのピストンが同じようなスムーズさになるわけではありません。洗って揉み出ししていく内に差は少なくなっていきますが、最後まで僅かながら差は残ります。どのピストンが動きやすいのかそうでないのか、それを掴んで揉み出しをしていくのがコツといえるでしょう。

 

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ピストンピンの押し出しはこのくらいを限度としたほうが良いでしょう。これくらい洗えれば充分です。欲張ってあまり出しすぎると「ピストンが抜ける」という大事故を起こします。ピストンが抜けたら塗装を犯すブレーキフルードが飛び出し、修復は大変なことになります。整備経験が浅いうちに、ピストン揉み出しを安易にやらないほうが良いと言われる理由はここにあります。焦らずに行うようにしましょう。

 

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ブレーキパッドを取り付けます。ブレーキローター分の隙間は開けておくようにしましょう。

 

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パッドスプリングの取り付けは少しコツがいります。パッドを均等に保持しつつスブリングを押し付けながらバッドピンを通す。ブレンボはパッドピンが一本なのでニッシンキャリパーの2本よりやりやすいと感じましたね。

余談ですが、レースの世界ではパッドスプリングをブレーキフィーリングを向上させるために取り付けない時期がありました。パッドスプリングはピンとパッドに押し付けられているので、ブレーキリリース時のパッドの動きが悪くなるから・・と考えられているからだと思います。しかし、このスプリングが無いために本締めを忘れたパッドピンが走行中に簡単に抜け落ち、すなわちブレーキパッドも脱落してブレーキが効かなくなって転倒という事故が発生しました。パッドスプリングがあれば、緩んでも押し付けられる力がまだあるためにピンは抜けなかったかもしれない事故です。そのため、レギュレーションでパッドスプリングの取り付けは義務化されています。取り付けは少し手間がかかり面倒ですが、パッドスプリングはつけるようにしましょう。

参考リンク
HRC | 技術情報 | セッティング | 2004年 クラスレギュレーション変更に伴う注意

 

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キャリパボディもパッドスプリングも綺麗に金色になり、やはり見た目がいいですね。このくらいになれば満足です。まだ汚れがついてますが、きれいに拭き取りました・・。

取り付けの際の注意ですが、ラジアルマウントではないキャリバもそうですが、キャリパをブレーキローターの回転方向(上側)へ押し上げながらキャリパマウントボルトを締め付けるようにしましょう。分かると思いますが、キャリパ取り付けにはわずかながら「ガタ」があります。回転方向へ押し付けずに締め付けると、ブレーキングでそのガタが緩みとして発生してしまい、ブレーキング時にキャリパ自体が動くようになってしまいます。

CBR時代にこの失敗をしてしまい、ブレーキングする度にブレーキレバーにコンコンコンコン・・と断続的な妙な感覚が伝わり、怖い思いをしたことがあります。つまりキャリパ取り付けが緩んだのです。

素人整備レベルではこういう失敗をして怖い思いをする場合があります、キャリパ取り付けの際のお約束として注意してください。

 

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キャリパ周りが綺麗になり、パッと明るくなりましたね。やった甲斐を感じる、満足度が高いメンテナンスです。

 

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