Ducati 899 Panigaleいじり

Ducati 899 Panigale いろんな意味でいじりとバイク全般

なぜMOTOGPライダーはイン側の足を出すのか

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暇なので、最近よく言われてるタイトルにもなっている事を全力で考えてみました。

もちろん、私はモトGPライダーではないので想像の範囲です。が、私はバリ伝の画が普通に動いて見えるほどなりきり妄想に入り込むのは得意なので、その物がどういう運動状態に陥っているのか想像するのは得意であり好きです。この手の話は誰かが「こうだ!」という意見を出して、「いやそれは違う!」という反論の意見を生まないと謎の解明が進まず、いつまでも「なんとなくイン側の足を出しているらしいよ」という、くだらない解答を産み続けるだけになりますので、非難覚悟でこれに決着をつける一石を投じたいとも思います。

 

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オートバイがコーナーに向けてブレーキングしている時、ライダーの体はこれからコーナーの曲がろうとする側へオフセットされ、曲がりはじめる体制をとった状態がとられます。少しでも早く、強く曲がり込めるようにイン側にオフセットするのです。この時、マシンはセルフステアによる逆操舵状態となります。ステアリングがコーナーとは逆の方向にわずかにハンドルが切れた状態で直進している状態であり、ブレーキがリリースされることでまたセルフステアでハンドルがコーナーの側へと切れてコーナリングフォースを得ていきます。

ここで、近年のモトGPマシンの旋回力が異常に高められていること、モトGPのタイヤのグリップが異常に高められていることにより、逆操舵状態といえどもコーナリングフォースが高く発生してしまっていることにより、直進ではなくアウト側に飛び出そうとする力がかなり強く働いていると思われます。これは市販車レベルでサーキットをスポーツ走行程度のペースで走っても感じにくいでしょう。

もっとも重く、最も速い、扱う運動エネルギーが最も高いモトGPクラスやスーパーバイククラスでのみ顕著に見られる動作であることが証明しています。つまりライダーはコーナー進入でマシンを直進させる事と戦っているわけです。この時、マシンを直進させるために、下半身をすぐ曲がり始められるように大きくイン側へオフセットしつつ、上半身はまだ曲がりはじめないようにマシンのセンターや少しアウト側へ残し、直進させるためのバランスをとるという、上半身と下半身で相反する行動によってバランスをとります。これが通常のマシンでのコーナー進入動作です。今までは「早く早く!」と直進しつつインに倒れ込もうとするマシンをライダーが「まてまて」という具合に抑えこんでいれば良かっただけなのが、モトGPマシンでは「早く早く!倒れさせてくれないなら逆操舵力でアウトに行っちゃうよ!」と直進ではなくアウト側に飛び出ようとしているです。ここで前述したモトGPマシンは逆操舵状態でのフォースがとても大きいため、この動作だけでは直進させることがとても難しくなっている事がわかるでしょう。

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そこで、足出しとなるのです。本来ライダーはコーナーへのブレーキング時に下半身をインへオフセット、上半身をセンターやアウトへ残すことによって直進性をキープしてきました。では、この強烈な逆操舵状態の時にアウトへ飛び出そうとする力と戦うにはどうしたら良いのでしょうか。上半身も下半身もそれぞれに精一杯の配置で動作をしているのでマシンホールドのためにもヘタに動かせない、そこでイン側の足なのです。

本当にモトGPの逆操舵時にそんな力がかかっているのか?直進させるだけにそんなに難しいのか?その疑問はストレートを走るモトGPマシンを見ればわかります。分かりやすく言うと茂木サーキットのダウンヒルストレート、直前のヘアピンを立ち上がってきたマシンはまず間違いなく一旦観客席と逆のウォール側へ蛇行し、それからダウンヒルストレートを下りながら次の右90度コーナーのためにアウトである観客席側へまた蛇行します。ヘアピンを立ち上がって全力加速するモトGPマシンには直前のヘアピンを立ち上がってきた右コーナリングコーナリングフォースが残っており、まだそれが残った状態で全力加速をかけるので立ち上がってもマシンは右へ右へとまだ曲がり続けようとしてます。フルスロットルなのですからその力はそうそう開放されません。唯一、これを防ぐとしたら「スロットルを一旦ゆるめること」です。しかし全力で走るのがレースですからスロットルを戻すと遅くなりレース的にはありえない(あるまじき)操作になります。スロットルをゆるめてストレートを直進させると事と、そのまま全開加速でストレートを蛇行させて走ることを天秤にかけた結果、距離的に無駄にも思えるがトラコンなどであれこれいじらずにストレートは自然に蛇行させてしまったほうがトータルで良いというある種の結論に達したのでしょう。ちなみに、昔からレースの世界では「ストレートは競り合いの駆け引きを除き、無駄に蛇行などせず、フルスロットルでサボらずしっかりまっすぐ走ること」が鉄則中の鉄則とされています。この鉄則さえも反故にしてしまってOKというモトGPの特殊さが垣間見える一面です。

 

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ブレーキング状態の時、昔からイン側の足は自由でした。レーシングシーンにおいてタンクを両足ではさみこむニーグリップという役目はほとんどがタンクにひっかけたアウト側の内股とマシンに沿わせたアウトの足全体で成されることであり、イン側の足はほぼ力のかかっていない、いつコーナーに向けて膝を突き出していくか、倒しこみのタイミングを図るための役目が主だったのです。これを結構ハッキリやっていたのがケビン・シュワンツミック・ドゥーハンなどで、倒しこみの際にハッキリとして内足外し動作からイン側のステップを踏み直すという動作を行っていたのが確認できます。これを「シュワンツなどは現代のイン側足出しを当時からやっていたのだ」という意見もありますが、これは違います。当時はまだ軽量で現代と較べてパワーの低い(発生する運動エネルギーの低い)2ストロークマシンだったこともあり、ブレーキング時の逆操舵状態で産まれる力はそれほど脅威ではありませんでした。なので、シュワンツの足外しは単なる倒しこみの最適なタイミングをとり、素早くクイックにマシンを倒しこむ運動を発生させるためのものです。(正確に言うとイン側の足による上半身への支えを、イン足をステップから外すことで一気に失わせ、上半身をイン側へ落下させてコーナリングフォースを産む急激な重心変化をマシンへ与える運動を行いやすくしている)。
あの当時やっていた一瞬の足外しと、現代の内足外しは主旨が全く違います。

 

現代の話に戻りましょう。ここで比較的自由だったイン側の足、これをコーナー進入時にマシンを直進させるためのバランサーとして活用しているのが現代の内足外しの正体です。本来、ライダーはイン側の足をブラーンと出しているつま先の位置、そこの垂直な線の位置に頭の重心を置きたいのです。ライダーはそこを本来のマシンを直進させるための重心点・バランス点と感じているのです。しかし、上半身はマシンがまだ倒し込まないようにアウトに位置させておかないと、いざ倒しこみのための上半身をイン側へ落とす重心移動量が足りなくなってしまいます。頭は今の位置からは容易に動かせません(あるライダーを除いて)。そこで残されたバランサーはイン側の内足だったのです。これを最初に発見したのは、当時誰よりも早くモトGPマシンに乗り出してモトGPマシンというものを体感し経験を積んでいたバレンティーノ・ロッシだったのは当然の事だったのかもしれません。バレンティーノ・ロッシバイクを楽しみ操る、自由な感性・発想力がそうさせたといっても過言ではないでしょう。マルク・マルケスもかなり大胆に内足を出しますが基本的にロッシとタイプは同じであり行動理由は同じと考えられます。内足外しは比較的長いストレートの後などの強烈なハードブレーキングからのコーナリングへ移る際などに左右コーナー関係なく顕著に行われているのが、この仮説を立証するものだと思います。つまり逆操舵時にアウトへ飛び出す運動エネルギーが高く発生する地点です。

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また内足は外しはリアの荷重を積極的に抜いてmoto2的にリアスライドを誘発させ向き変えするためのものという説もありますが、これも頷けます。それは内足外しでギリギリまで我慢してから、内足をまたステップへ戻した時に発生します。まさに倒し込もうとしている時であり強大な逆操舵力が復活します。と、ここでいよいよコーナーへの進入のためにフロントブレーキを緩めたらどうなるでしょう。それまでの逆操舵力は一気にセルフステアされ今度は逆のインへと向かうステアリング動作に変換されます。すると、マシンのフロント側が急激にインへ向くことにより、リア側が反動で一気にアウトへ振り出される力が発生します。これがリア荷重抜き説に繋がります。あのリアの振り出しはリアプレーキによるものだエンジンブレーキによるものだとか言われていましたが、私が言うには「セルフステアの逆操舵復帰力で降りだしている」です。

※モトGP黎明期のロッシ+RC211Vのコーナー進入時リアドリフトはエンジンブレーキコントロールがまだ未熟だった為だと思います。

そしてまさに、現代のGPマシンが見せている、コーナー進入時にリアをアウトへ見事に降りだしての強烈な向き替えが行われています。もちろん、これには車体セッティグ、エンジンブレーキコントロールなどちょっと想像すると気が遠くなるようなセッティングコントロールが必要なのが見えてきます。ワークスチームの電制はこういうノウハウをもっているのが大きいのではないでしょうか。

 

最初のコーナーが左、抜けて少しだけ長めのストレート、次が右コーナーという場合。ストレートで切り返して右コーナーに進入する際、そこまで走ってきた切り返し後のコーナリングフォースにより右コーナー進入前にアウトへ飛び出しそうな時も、それに対向するために内足は出される事が多いです。

 

この強烈な逆操舵力に対抗するための内足外し、我々一般ライダーにも体感しやすい例を上げるとすれば、こういうシチュエーションがあります。
オートバイで走りだし、すぐに右折する必要がある場合を思い出してください。道が混んでいてコンビニ駐車場などから発進してすぐに右折して加速していく必要がある場合などですね。「走りだして曲がってすぐに加速していく」ここが大事です。
で、この時、あなたはこんな行動をとったことはないでしょうか?

「右に曲がって加速しながら左足をステップから外しアウトへ突き出したり、ぶらぶらさせたままにしておく。」

なんとなく見に覚えはないですか?私自身もやります。昔から無意識で自然とやっていて、これが加速している時に安定するんです。「なんでやるんだろう?なんで左足ホールドを外してまでやってるのに安心感があるんだろう?」と。確かに両足をステップに乗せたまま右へ加速していくより妙に安心感が強く、そして確かにバランスもいいのです。

自分でも考えていたんですが、この内足外しを考えるようになってアッ!とわかりました。マシンがまだ低速で不安定な時に右へ曲がり、そこから加速して安定性が出るまでの間、ぶらぶらさせた左足はまだ低速で不安定なバイクが右側に倒れ曲がり過ぎないためのバランサーとしての役目をしていたのです。そしてモトGPライダーはこの我々一般人が右に曲がろうとして左足をブラブラさせている時、彼らはまさに左コーナーを曲がろうとその直前にマシンを直進させたようと戦っていると想像してください。彼らモトGPライダーは右へ曲がる力(逆操舵でアウトへ飛び出そうとする力)と対抗して戦っている。その時の姿勢はまさにモトGPライダーがコーナーに進入する際の内足外しの形ではないですか?

 

また、内足外しを切り返しに積極利用するライダーもいます。私の見たところではカル・クラッチローとダニ・ペドロサが短いS字切り返しなどでも最初に切り返す方向の足を外して突き出して切り返しの重心点をつま先付近に置き、その足を収納することで一気に切り返しのためのフォースを産んでいる「応用技」というものも見られます。ペドロサはコーナー進入時はあまり足は出しませんが、こと切り返しのところでは誰よりも積極的に放り出し、切り返しの運動に利用するようです。ペドロサ自身の体格的な不利を補うために彼が見出した手法ともいえるかもしれません。

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クラッチローは進入・切り返しどちらも派手に足を出します。ただ、これは見たカンジでは「乗れている感」を演出する目的のほうが多く感じられ「自分を鼓舞する」意味で行われている節があります。

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内足外しはある意味「ライダーとして乗れている」事の体現・証明でもあり、それを自ら行うことによって自身への走行中の精神的カンフル剤としての効能も確かにある動作なのです。この区別は「足が中空で運動エネルギーとバランスされてブラブラと揺れているか」「自分の意志でバランスとは関係なく筋力のみで突き出し保持されたものであるか」である程度区別することが出ます。これが分かるとライダーの心理状態も透けて分かってくるので、レースを見るのもまた一段と深みを増してきます。

 

 

 

と、ここまで書いてきましたが、この内足外しを語る上で避けて通れないライダーがいます。

 

ホルヘ・ロレンソ

 

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もう、意味はお分かりの方もいると思います。ホルヘ・ロレンソ選手は現代のモトGPトップランカーの中で唯一、内足外しを行いません。

※正確に言うと、モトGPクラスに昇格して二年ほどは流行しだして内足外しにトライしていた様子はあります。が、ある頃からロレンソ選手はパッタリと内足外しは行わなくなります。それはチームメイトから宿敵ライバルへと存在が変貌したロッシ選手との関係も少なからずあると思われ・・。

 

ロレンソに限ってはなんで内足外しをしないの?これは内足外しが行われる謎と共に必ず出てくる質問であり、回答者を悩ませていました。宿敵となったばすのロッシが考案した内足外しテクニックを真似したと思われたくないから、チャンピオンシップで同等の立場になった自分のプライドが許さないからという冗談ともとれない理由があるにはあるのですが、私は意外とアリだとは思いますが・・。

 

とまあ、冗談(!?)はさておき、私がロレンソが内足外しを行わないと思われる理由を上げてみます。これは本当に難しい、ここまでで最も「単なる推測」の域になってしまいますがあえてチャレンジしてみます。

ロレンソ選手が内足外しを行わない理由、それは「頭の位置」です。

何の事かというと、コーナー進入ブレーキング時の頭の位置です。ロレンソ選手はGP250時代からかなり「イン側へ大きく頭を落としこむスタイル」を身上としており、どちらかというと頭の位置エネルギーをそのままインへバタンと倒すことによってマシンを倒しこみ、また体全体ではなく頭の微妙な配置でコーナリング中のバランスをとるタイプのライダーだと思われます。昔で言う清水雅広、坂田一人、などに代表されるようなドングリ乗りの更なる進化系という奴で、当時のマシン性能の上では頭は必ずトップブリッジの上のセンターに残すべしという鉄則から外れたタイプで、けして褒められたスタイルではありませんでした。

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しかし、まだ古い「頭センター」の時代から大きくインへ頭を倒しこむスタイルでチャンピオンを何度も獲ってきましたから、とにかくバランス感覚の身体能力・感性は並外れたものがあると思われます。ではなぜ頭なのか・・。実はロレンソ選手も内足外しと同じことをやっているのです。やっているけどそう見せていない、内足のかわりに使っているのは彼の武器「頭」なのです。

 

けっこう上で私はこう書きました。

「本来、ライダーはイン側の足をブラーンと出しているつま先の位置、そこの垂直な線の位置に頭の重心を置きたいのです。ライダーはそこを本来のマシンを直進させるための重心点・バランス点と感じているのです。」

アッ!!と思ったかた、それが正解です。

そう内足を出せなかったら、頭の位置で同じことをやる方法もあるにはある。本来、それが出来ないことによる内足外しというバランスの打開策、ロレンソ選手は本当にこれを頭の位置でこなしているのです。

ロレンソ選手のコーナー進入時を観察してみると分かるのですが、コーナー進入へオフセットしている段階で頭の位置がすでにかなりインに置かれているのが分かります。他のライダーは旧来通りのセンターかややアウト側へ上半身をひねるようにして配置されています。前記したように頭の位置エネルギーを倒しこみの力へと変換させたいためです。これをロレンソ選手はまさに他のライダーが足を突き出したつま先位置の垂直線の上に頭をすでに配置していると思われます。つまり、これで内足外しと同じバランス効果を出しているのです。そして、ロレンソ選手が元々持っていた起きあがりこぼしのようなバランス感覚で倒しこむことが出来ているのです。これはロレンソ選手のやってきた乗り方だからこそできる方法で、内足外しをしなくとも同等の速さを叩き出していると納得できます。

また頭の高さなど位置調整が不確実になる「ステップから不用意に足を外すこと」が彼に合わず、嫌ったのも内足外しへのトライをやめた理由の一つではないかと思われます。要は内足外しをやってみたら、今まで自分の培ってきた頭の位置調整のノウハウで同じことができるのが分かったからやらなくなった、というところではないでしょうか。

また、これも上で書いた

「右に曲がって加速しながら左足をステップから外しアウトへ突き出したり、ぶらぶらさせたままにしておく。」と妙な安定感がある。

これはコンビニから出て行く話ですね。これもロレンソ選手なら左足を外さずに頭の位置を大きくアウトに持っていくことで同じバランスをとる行動を彼ならとることでしょう、こんなふうに(あくまで想像)

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 読者の中でも「俺はステップに足乗せたままでは不安ないけどなあ・・」と違和感をもっていた方はロレンソタイプの頭位置のバランス感覚重視でバイクを操るタイプではないでしょうか。ライダーによって様々な操作がありますが、バイクを操る操作としては一緒の事が多いですね。

 

 

ここは私のブログですから、私の思うことを好きなように書いてみました。

読み解いて頂けたら幸いです。

 

私なりに考えてこれでは?と得た結論ですが、どこまで合っているかモトGPライダーに聞いてみないと分かりません。この考察の何かが皆さんの思考の助けになり、謎の解明に一歩進んでくれたらと思います。

 

PS

誤字脱字含め、考察内で微妙な修正はあると思います。